LLMOのプロンプト設計は、AIへ自社を推薦させる「魔法の指示文」を作る作業ではありません。顧客が認知、比較、選定、導入、事実確認の場面で尋ねそうな質問を、観測可能な調査票へ変える作業です。本記事では、質問候補の集め方、30問への絞り方、指名・非指名の分離、自然な質問文への変換に範囲を絞ります。

結論:プロンプト一覧は測定の標本設計

測定用プロンプトは、調べたい顧客接点を意図的に抽出した標本です。世の中の全質問を網羅することも、各質問の利用回数を正確に表すこともできません。だからこそ、選定理由、対象顧客、検討段階、重要度、変更履歴を質問ごとに残します。

公開されたChatGPTやPerplexityの全質問を取得できる共通データベースはありません。Google Search Consoleで確認できるのはGoogle検索で自サイトが表示されたクエリであり、AIサービスへ入力された全プロンプトではありません。競合ツールが示す推定需要も、取得範囲と計算方法を確認して使います。

  • 目的:顧客の重要な意思決定で、自社・競合・情報源がどう扱われるかを観測する
  • できること:固定した質問群の言及、引用、正確性、推奨文脈を期間比較する
  • できないこと:全ユーザーの質問分布や将来の回答を再現する
  • 避けること:都合のよい質問だけを選び、全体の可視性スコアと呼ぶ

「キーワード」と「測定プロンプト」を分ける

キーワードは検索需要や検索結果の競争を調べる単位です。測定プロンプトは、生成AIへ実際に入力し、回答と根拠を観測する単位です。両者は接続できますが、同じものではありません。

たとえばGoogle検索の「LLMO 費用」は、AI測定では「LLMO対策の費用は何で決まり、依頼前に何を比較すべきですか」のような自然な質問へ変えられます。質問には対象企業、地域、予算、比較条件が加わる場合があります。ChatGPT Searchは入力を一つ以上の検索語へ書き換える場合があるため、入力した文章と裏側の検索語が常に同じとも限りません。

検索順位のキーワード台帳とAI回答の質問台帳を別々に持ち、元になったキーワードや営業上の根拠を相互参照できるようにします。

質問候補を集める5つの情報源

第一候補は、実際の顧客が使った言葉です。営業商談、問い合わせ、サポート、サイト内検索、アンケートから、課題、比較条件、不安、導入条件を抽出します。個人情報や機密情報は除き、意味を変えない範囲で一般化します。

第二候補はGoogle Search Consoleです。表示回数がある非指名クエリ、表示は多いがクリックが少ないクエリ、問い合わせに近いページを表示したクエリを確認します。ただし、Search Consoleはプライバシー保護のため一部クエリを匿名化し、表へ全行を表示するわけではありません。データがない新規サイトでは、需要がないと断定せず、他の情報源で初期版を作ります。

第三候補はGoogleの検索候補、関連検索、People Also Ask、既存のキーワード調査です。第四候補は、自社と競合のサービスページ、料金、FAQ、レビューで繰り返される判断条件です。第五候補としてAIへ案を出させることもできますが、AI生成案は実需要の証拠ではなく、抜け漏れ候補として扱います。

  • 顧客一次情報:商談、問い合わせ、サポート、サイト内検索
  • 検索実績:Search Consoleのクエリと表示ページ
  • 公開検索需要:検索候補、関連検索、PAA、キーワード調査
  • 比較材料:自社・競合の機能、対象顧客、価格条件、制約
  • 仮説補完:AIによる質問案。採用前に事業との関係を人が確認する

顧客の検討段階で6群に分ける

最初の30問は、六つの質問群へ5問ずつ配分すると偏りを発見しやすくなります。業種により購入や地域の質問が不要な場合は、別の群へ振り替えます。件数は普遍的な正解ではなく、初期版を運用できる大きさの例です。

認知・課題整理では、まだカテゴリ名やブランド名を知らない顧客の悩みを扱います。解決策・カテゴリでは、選択肢や方法の違いを確認します。比較・選定では、候補、費用、実装範囲、選定基準を扱います。導入・運用では、期間、体制、移行、リスクを確認します。ブランド評価では、指名で説明の正確性と比較上の位置づけを見ます。事実確認では、価格、提供地域、対象顧客、仕様、運営主体などの重要事実を確認します。

  • 認知・課題整理:困りごと、失敗、不安、目的
  • 解決策・カテゴリ:方法、種類、代替、向き不向き
  • 比較・選定:おすすめ、比較条件、費用、依頼先
  • 導入・運用:進め方、期間、担当、リスク、評価
  • ブランド評価:自社の特徴、競合比較、評判、適合条件
  • 事実確認:価格、対象、提供範囲、運営、最新情報

指名質問と非指名質問を混ぜない

ブランド名を質問に含めれば、そのブランドの言及率は構造上高くなります。指名質問を非指名の「候補に入るか」という質問と同じ母数へ混ぜると、可視性を過大に見せます。

非指名質問は、ブランドを知らない人が課題や比較条件から候補を探す場面を測ります。指名質問は、既に知っているブランドについて、公式情報を正しく取得・説明できるかを測ります。競合名を含む直接比較も、別の質問群として集計します。

集計では、非指名候補掲載率、指名の公式引用率、重要事実の正確性、競合比較の説明を分けます。全体を一つの点数へまとめる場合も、各群の件数と重みを公開します。

一つの種から自然な質問を作る

検索語や営業メモをそのまま質問へ貼り付けず、誰が、どの課題で、何を判断するかを明らかにします。ただし条件を詰め込みすぎると、実際の顧客が尋ねない人工的な質問になります。

「在庫管理 システム」なら、認知では「在庫差異が増える原因と改善方法は」、比較では「小売店向け在庫管理システムを選ぶ基準は」、選定では「複数店舗で使える在庫管理システムの候補を比較して」、導入では「既存POSから移行するときの手順とリスクは」のように展開できます。

  • 主語:対象顧客または利用者が分かる
  • 課題:解決したい状態が一つに絞られている
  • 判断:回答を読んだ後に決めたいことが明確
  • 条件:地域、規模、予算など必要な条件だけを加える
  • 中立性:非指名調査では自社名や望む結論を入れない

30問テンプレートの使い方

配布CSVには、六つの質問群を各5問、合計30問収録しました。角括弧の項目を自社の事実へ置き換え、根拠となった顧客発言、Search Consoleクエリ、検索候補、サービスページなどのURLや記録を付けます。

質問IDとバージョンは固定します。文章を変更した場合は同じ行を上書きせず、新しいバージョンとして開始日を記録します。比較期間の途中で質問を追加・削除した場合は、共通質問だけの比較と全質問の参考値を分けます。

最初から30問すべてを高頻度で回す必要はありません。事業影響が高い10問で試行し、回答の揺らぎ、判定工数、重複を確認してから広げます。対象AI数、実行回数、頻度を掛けた回答総数を先に計算し、保存と判定を続けられる設計にします。

測定方法は別の台帳で固定する

この質問台帳は「何を尋ねるか」を管理するものです。「どう実行し、何を保存し、どう判定するか」は測定台帳へ分けます。質問が同じでも、対象サービス、画面上のモデル、Web検索、地域、言語、会話履歴、日時で回答が変わるためです。

実行条件、回答ログ、指標、母数、除外、再計測の設計は、関連記事「AI検索可視性の測り方」で詳しく扱います。質問を作る段階では、測定台帳へ渡せる質問ID、バージョン、採用理由を欠かさないことが重要です。

良いプロンプトを点検する20項目

良い質問は「AIが答えやすい文章」だけでは決まりません。事業上重要で、顧客が使う可能性があり、観測後に改善行動へつながる必要があります。配布チェックリストでは、根拠、意図、偏り、条件、判定、運用の六領域を確認できます。

特に、質問を作った人が望む回答を誘導していないか、ブランド名を含む理由があるか、適合しない顧客まで候補掲載を目指していないかを確認します。質問の採用理由を説明できない場合は、数を増やす前に保留します。

公開直後でSearch Consoleにデータがない場合

新規サイトや新しいSearch Consoleプロパティでは、実績データの生成に時間がかかります。Googleは、新規追加サイトのデータ生成に最大約1週間かかる場合があると案内しています。データがない間は、営業・問い合わせ、既存顧客の言葉、サイトの対象顧客と課題、検索候補から仮説版を作り、「暫定」と表示します。

表示クエリが得られたら、仮説版と照合します。新しい意図を追加し、重複を統合し、表示はあるが候補に含めていなかった質問を優先します。Search ConsoleのクエリはGoogle検索の実績であり、AIプロンプトの実利用件数とは呼びません。

質問群の変更履歴を残す

固定し続ける比較用コア質問と、新しい需要を試す探索質問を分けます。コア質問を毎回入れ替えると推移を追えず、探索質問を一切変えないと市場や製品の変化を取り込めません。質問の追加・終了時には、根拠、開始日または終了日、後継質問を残します。

更新頻度は一律に決めず、サービス、制度、競合、顧客課題が変わった時と、Search Consoleや営業ログに新しい意図が現れた時に見直します。質問群自体の変更と、同じ質問で観測した回答変化は分けて報告します。

設計した質問を診断へ渡す

質問台帳の目的は、スコアを作ることではなく、重要な顧客接点を改善できる診断へ渡すことです。回答ログの保存、指標、母数、再計測は関連記事「AI検索可視性の測り方」、症状別の原因切り分けは「ChatGPTで会社名が出ない原因」で扱います。

日本LLMOセンターのLLMO診断では、事業に重要な質問群を設計し、回答、引用、正確性、競合との差を同じ条件で観測します。質問を作る前提となる対象顧客、サービス、比較条件が整理できていなくても、問い合わせ時に公式URLと「候補になりたい顧客課題」を三つ共有いただければ、測定範囲から整理します。